茨城寺社巡礼    029

鷲神社(土浦市) 巡礼者 今瀬 文也


民俗芸能として、1962(昭和37)年に県の民俗文化財に指定された






 
滝のように降るからかさ万灯

雨乞いに御利益
 鷲神社は土浦市大畑にあり、からかさ万灯の花火が有名です。祭礼は九月十七日ですが、最近は八月十七日になり、現在は八月十五日にからかさ万灯が奉納されます。
 祭神は天日鷲命(あめのひわしのみこと)で国譲り・国土平定神話に登場する神で、織物の神です。鷲神社の前身として、平安時代に古代社があり、宗願院という別当寺が支配していたようです。鷲神社の創建は慶長八(一六〇三)年で、植物繁茂、五穀豊穣の神として信仰されてきました。また流行性感冒平癒、家内安全、天下泰平に御利益があるといいます。神体は木像です。

からかさ万灯を奉納
 からかさ万灯は直径五㍍、高さ五㍍の大きなもので、百㍍ほど離れた鳥居から綱火によって点火されます。
 上部にある「八つ口」といわれるところに火が移り、火は四方八方に噴出していきます。そのうちに、「手ぼたん」に火が移って、火花が傘の回りから滝のように降ってきます。これが「立て花」です。この雨のように落ちる火花が落ちると、今度は傘の周囲にさげられた提灯に点火し、この提灯の火だけが残ります。
 からかさ万灯の大部分は、竹で作られており、毎年、補修しながら使用しています。火薬作りは、かつて、極秘とされ長男だけに伝えられ、花火の十日前に夜なべとして作られていました。大正時代になって「火薬製造法」が作られ、製造について正しく伝えようとしました。

昔は火薬も製造
 製造にあたって、花火の光をあざやかに出すために、鉄粉を火薬に混合します。そのため、古鉄を各家庭から集め、錆を落とし、金槌で小さく砕き、薬研やげんですって火薬の中に入れました。
 桐炭が火薬に一番効果的なので、桐の木を焼いて炭を作り、これを砕いて薬研でひきました。ここまで準備するのが大変でした。これらは、先にあげた「火薬製造法」が出来るまでは、口伝でした。硝石、硫黄、炭、鉄、灰、樟脳などが調合され美しい花火になりました。
 この花火調合は、戦後、「火薬取締法」によって、業者が製造するようになったので、氏子は打ち上げに集中すればよいわけですが、花火はほんの十分間で終わってしまいます。

畑作豊年を祈る
 境内社として八坂神社(素盞鳴命)、天満宮(菅原道真)があります。本殿は一間四方です。この地域は畑作が主体で、天水に頼っていましたが、用水の便が悪く、雨を降らせるため、神様に祈りました。その時、からかさ万灯を奉納するしきたりが生まれ、ずっと伝承されています。
 本来は雨乞いの行事でしたが、からかさと花火を合わせた民俗芸能として、一九六二(昭和三十七)年に県の民俗文化財に指定され、各地の大会に出演、公開しています。この公開の日には全国から多くの人たちが集まり、賑わいます。

 

創建は慶長8(1603)年で、祭神は天日鷲命

善光寺 (石岡市)(028)    清瀧寺 (土浦市)(030)