静寂そのもの 森の中に建つ本堂
1200年ぶりに常陸、磐城、磐梯を歩いて、何処へ行っても私の名が残っているのには驚きました。私が健脚だったことを自慢すると、「公害もなく徳一さんは良い時代に生きましたね」と寺博士はいいますが、そうでしょうか。
いわき市の山道を真言宗智山派の医王山東陽寺まで来ました。寺は大同年間(806~9)に建立されたそうで、詳細は不明といいますが、「徳一さん、開基の伝説がありますからそうでしょう」と寺博士が案内してくれました。
教育に熱心な寺だったようで、寺子屋教育をしていて、修養学校といった時代もあったそうです。森の中に本堂が建っています。静寂そのものです。明治になってからは入遠野小学校となるので、その前身です。
寺は明治40年(1907)に火災ですべてが焼失、今回、私の訪れた本堂は明治41年から43年(1908~10)にかけて再建されたものだそうです。
寺は焼失することが多く、何処へ行っても「徳一」は伝説の人になっています。寺博士は「徳一さんはどんな容姿をしていたのでしょう。結構、歩いてみると、徳一さんの像がありますが、みな美男ですね」といいます。これは嬉しいことです。
本尊は十一面観音菩薩立像です。東西南北、東南・東北・西南・西北の8北に上下、それに本尊の顔を合わせて十一面をもち、あらゆる方角に救いをもたらしています。
「そのことから考えると、この観音の化仏10面が欠けているので、御利益はどうでしょう」と寺博士は心配そうでした。「信仰は気持ちですよ」と私は言いました。
そのほか、薬師如来坐像と釈迦如来立像があります。医王山だから、元は薬師如来が本尊だったと思われます。境内の宝篋印塔は天明年間(1781~9)の建立だそうです。
【メモ】
医王山 東陽寺
〒972-0251
福島県いわき市遠野町入遠野字関屋85
電話 0246-89-2850
【宗派】 真言宗智山派
【本尊】十一面観音菩薩立像 |
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