徳一が歩く   法海寺(35)                                    (財)茨城県郷土文化振興財団


寺の由緒を伝える山門



鐘撞堂は大震災の余震で倒壊し再建された。梵鐘はいわき市文化財

    十一面観音を安置したとの縁起がある

 いわき市を歩くことが多くなりました。寺博士もいつも一緒なので、安心なのですが、時代の差は埋められません。
 常磐藤原という所の三箱山法海寺へ行きました。現在の寺は永禄2年(1559)に真言宗宥長の開山だそうです。私は大同2年(807)例によって、この地域を行脚していたようで、湯ノ岳に観音堂を建て、私自身が十一面観音を安置したと縁起にあります。
 その当時、法海寺は、私のために、別当の役目をしていたということです。私がここを去ってからも、多くの人の信仰があり、徳川3代将軍家光から朱印10石を賜っています。
 それ以前、藩主の保護を受けましたが、焼失、永禄8年(1565)に再建。しかし、風雨の傷みで、延宝9年(1681)大改修が行われ、梵鐘と鐘楼も作られました。これは遠山主殿頭藤原朝臣政亮夫人の力によるものだそうです。梵鐘にはその由来が書かれています。
 しかし、世の中はうまくいかないもので、天保6年(1681)に観音堂がまたも焼失、尊像だけは湯ノ岳から法海寺に移され、観音堂も安政3年(1856)に再建されましたが、文久3年(1863)本堂とともに観音堂も焼失、観音像も焼失したものと思われます。いずれにしても、私の刻んだという十一面観音はありません。
 観音堂は昭和14年(1939)に再建され、その後、本堂、庫裡、客殿、鐘楼を改築、位牌堂の新築が行われ、昭和57年(1982)にすべての工事が終了しました。
 湯ノ岳観音は由緒があり、別当寺であった法海寺が守っていますので、私は安心しています。その上、磐城三十三観音札所第5番として、多くの方の信仰を受けています。
 「徳一さんの観音様が現代も生きていてよかったですね」と寺福士は満足して、私と握手を交わしました。

  【メモ】三箱山 法海寺
〒972-8326
福島県いわき市常磐藤原町田場坂125
電話0246-43-5201
【宗派】真言宗智山派
【本尊】阿弥陀如来
【行事】元朝大護摩供養、お山掛け修行(8月第3日曜日)




阿弥陀如来像が安置されている本堂は昭和14年の落慶



 
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