徳一が歩く   禅長寺(29)                                    (財)茨城県郷土文化振興財団





禅宗式の山門

           仏堂に県指定の文化財
 
 いわき市小名浜は漁港として有名な所で、寺博士は「今日は魚料理の美味いのを食べます」と期待し、足取りも軽やかです。
 寺の名称は禅長寺で、現在は臨済宗妙心寺派です。ここも大同2年(807)、私が草鞋をぬいたといいます。
「徳一さんは体が幾つもありましたね」と寺博士はひやかします。いつも、すぐに、私の名は消えて何百年後に再興者が現れます。
 禅長寺は、文永年間(1264~74)に遠峰禅師(後鳥羽天皇皇子)が中興開山し、亀山天皇(在位1260~74)の勅願所になったそうです。天正7年(1579)には正親町天皇の「普門山禅長護国禅寺」と「海會」の2枚の扁額を受け、勅願寺になりました。「海會」は彫られたもので、県文化財の指定を受けて仏堂にありました。
 かつては、臨済宗建長寺派とのつながりが深く、建長寺の貫主が引退後、当寺の住職になったといいます。現在は妙心寺派に属しています。
 住職さんに仏殿の中を案内していただきました。市指定文化財で、正面5間(11・1㍍)、側面も5間の方形です。面積は123・9平方㍍、高さ16・4㍍です。禅宗の建物は土間が広く誰でも自由に中へ入れます。
 屋根は二層になっていて本来茅葺ですがトタンで覆われています。延享4年(1747)の建立の建物です。天井は格天井で雲龍などの絵が書かれ、柱は円柱状で通し柱です。
 内陣前方に須弥壇があり、その後方が厨子で、中には本尊の木造瀧見観音菩薩半跏像(十一面観音坐像)が安置されています。応永17年(1410)備後国の仏師、院尊の作で県の文化財に指定されています。
 禅宗式の山門も立派です。それに屋根なしで吊された梵鐘が印象的でした。「昔、このあたりを私は歩いたのですね」と寺博士に話すと、うなずいてくれました。





本堂内部




屋根なしで吊された梵鐘


木造瀧見観音菩薩半跏像

仏殿に掲げられた扁額
【メモ】
禅長寺
普門山 禅長護國禅寺
〒971-8122
福島県いわき市小名浜林城字大門9番地
電話0246-58-7941
【宗派】臨済宗妙心寺派
【本尊】十一面観音坐像
【寺宝】木造観音菩薩半跏像(県重文)/扁額 2面(県重文)「普門山禅長護国禅寺」と「海会」

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