徳一が歩く   松山寺(18)                                    (財)茨城県郷土文化振興財団





松山寺の本堂

    鐘を撞き煩悩を祓い、町の人に御苦労様と伝え

 勿来の関を越えて、関田という所に来ました。私が大同2年(807)に創建したようです。そして、後に真言宗に改宗されました。それでも私の名は忘れられないようです。
 私も寺博士も歩くのが楽しみになって来ました。「磐城三十三観音札所があるので行きましょう」と寺博士に誘われました。このうち管理している10か寺は私の創建と言われています。
 今日は松山寺を訪問しました。住職さんから寺博士に「鐘を撞き煩悩を祓い、町の人に御苦労様と伝えて下さい」と注文があり、こんな機会はないので、嬉しそうに撞きましたが、かなり力が入ってしまい、音色は不満でした。
 これは煩悩のせいでしょう。寺博士はまだまだ私とは背比べできません。
 「寺博士さん少し説教しますよ。貪(欲望・執着)、瞋(怒り・憎悪・怨恨)、痴(無知・愚かさ)を三毒といい、心の迷いです。自分に執着することを止めるべきです」
 私はついきついことをいいましたが。生きていく上でたいせつなことです。寺博士は、私の言葉に耳を傾けてくれました。
 松山寺は1200年前に私が創建したと言われ、この地域を毎日布教に歩いたようです。しかし、私のことについては不明です。
 時代が下がって、弘法さんの布教によって真言宗になったようです。この松山寺が納めているのが関田観音堂で、十一面観音像が安置されています。「みちのくのなこそ関田の 現清寺 岸うつ波は 松風の音」が御詠歌です。
 小さな観音様がたくさん奉納されているのを見て、その信仰の深さに感動しました。また地蔵和讃も盛んなようです。寺博士の撞いた鐘の音が思うようでなかったのか、元気なくさそうに見えました。






磐城三十三観音札所にもなっている

小さな観音様がたくさん奉納されている

嬉しそうに鐘を撞く寺博士

  【メモ】
開松山宝寿院松山寺
〒979-0146
福島県いわき市勿来町関田字寺下42
電話0246-64-7593
磐城三十三観音札所11番
【宗派】真言宗智山派
【縁日】 毎月17日
県重要文化財「紺紙金字法華経 八巻」


 
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