壁面十一面観音像
観音岩は小堂の裏にある |

小堂から見る十一面観音像 |
|
村の安全を祈り、眼を入れずに去る
城里町の孫根という所に「あなたの彫られた観音様があるから行ってみましょう」と寺博士にいわれ、私は健脚なので、行ってみることにしました。
昔、筑波から来て、昼ごろ、岩膚の見える下で一休みしていました。ちらっとみると、その岩がおごそかに見えました。
「そうだ、明日の朝、一番鶏が鳴くまでに、立派な観音像を彫ろう」と、考えたのです。私は月明かりの中で、祈りながら彫ったのです。コツコツ、カンカンと石を削る音が静かに響きました。
私は熱心に彫ったので、真夜中近くに殆ど完成し、あと眼をいれるだけになったので、一休みしました。ところが、その時、ニワトリの鳴き声が聞こえました。まだあたりは暗いし、そんな時間でもないし、私は耳を疑い、眼を入れ始めるとまた、ニワトリが、今度はさっきよりも、大きな声で鳴きました。
ニワトリは夜明けの象徴なのです。そこで私は名残惜しかったのですが、村の安全を祈って、そこを去りました。
1200年ぶりに来てみて、驚きました。
観音岩の前にお堂が建っています。私が彫ったといいますが、記憶にはありません。この観音様には伝説がついて回っています。
ムラの名も観世音村といった時代もあったそうです。私は皆さんに利益を与えたようで、今でも皆から崇拝されているようです。
観世音川の水はきれいで、昔、ここのヒルは村の人たちに吸い付かなかったそうです。それに私の彫刻の邪魔をしたニワトリを飼わないという話も聞きました。いずれにしても、私の修行の足りない頃のことです。
安産・子育ての仏様として多くの方の参拝があります。戦時中は子宝の村として表彰も受けました。現在、この観音堂は、城里町の真言宗大山寺の管理になっています。毎年、3月18日が縁日で、多くの人が集まって賑わうそうです。これからも、守ってください。
|